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地元企業・中小企業のウェブ戦略の考え方

up to date : 2025.10.25 Sat

こんにちは。
最近は、時間ができるとできるだけ自然の中で過ごし、頭をリラックスさせる時間を大切にしている森です。

私たちは、地元や地方の中小企業のウェブプロジェクトに関わる機会も多く、
経営者や現場のスタッフの方たちと、日々じっくりと対話を重ねています。

そのなかで最近よく感じるのは、「ウェブをどうつくるか」という以前に、
そもそもウェブを“どんな存在として捉えているか”が、企業によって大きく違うということです。


ウェブを「別のもの」にしないという視点

多くの企業がウェブをつくるとき、どこか“別のもの”として考えてしまいます。
「うちはウェブが弱いから」「若い人にもっと見てもらいたいから」「人が足りないからウェブでなんとかしたい」──
そんな言葉を聞くたびに、少しだけ違和感を覚えます。

なぜなら、ウェブは会社の外にある何かではなく、会社そのものの延長線上にある「もうひとつの現場」だからです。
オフィスや店舗も、商品やサービスも、理念や文化も、そしてウェブサイトも。
本来は同じ一本の線の上にあります。にもかかわらず、ウェブの話になった途端、
「外注に任せて整えるもの」「見栄え良く見せるもの」として、どこか別の存在に切り離されてしまうのです。

※ここで言う「ウェブ」とは、ウェブサイトに限らず、SNSやオンライン上のすべての接点を指しています。


会社にはすでに「選ばれてきた理由」がある

私たちがご一緒する多くの企業は、10年、20年、あるいは100年と続く会社がほとんどです。
長く続いているということは、それだけで「選ばれ続けてきた理由」があるということ。顧客は「他でもないその会社」を選び続けてきました。

しかしウェブ制作の現場では、その理由が空白のまま扱われることが少なくありません。
「今っぽいデザイン」「問い合わせに繋がる構成」「採用コンテンツの強化」──どれも大切ですが、
それが目的化してしまうと、テクニックや戦術ばかりが先行し、本来考えるべき“なぜこの会社なのか”という根幹がなおざりになってしまう。
ウェブとは、本来「会社の今を翻訳する場所」。だからこそ、その出発点は、これまでの積み重ねの中にあります。
積み重ねてきた価値、地域との関係性、働く人の姿勢、明文化されていないけど会社の中に存在する理念や文化、そういったことを見つめ直すことで、“会社の体温”が感じられるウェブになっていきます。


ウェブは「外注物」ではなく「自社の営みの鏡」

本当に良いウェブは、誰かに丸投げでつくってもらうものではなく、自社の営みがそのまま滲み出る器です。
製造業なら大切にしている工程、飲食店なら仕入れや人の想い、介護施設なら理想とする関わり方──それら“日々の当たり前”を可視化することが「ウェブをつくる」という行為だと思います。

だからウェブ制作は、会社をもう一度見つめ直すプロセスでもあります。
どんな想いで働き、どんな未来を描いているのか。
その「営みの鏡」として、ウェブはもっともその会社を表現できるメディアです。


戦略とは、“らしさ”を拡張すること

打ち合わせの場で「ウェブで新しい戦略を考えてほしい」という言葉をよく耳にします。
けれど、ほんとうの意味での戦略とは、新しい手段を探すことではなく、自分たちらしさを拡張することだと私は思っています。

他と違うことを無理に探すのではなく、もともと持っている個性を深く理解し、それを発信の軸に据える。
それが、地元企業や中小企業にとって、最も力を発揮できる戦略です。
ウェブでやるべきことは「何かを盛る」ことではなく、これまで培ってきた価値を、他者に伝わる言葉と構造へ翻訳すること
戦略とは、変えることだけではなく、まず“深めること”なのだと私は思います。


「ウェブをつくる」ことは「企業を編集する」こと

制作現場で私たちが行っているのは、実はデザインよりも編集に近い仕事です。
経営者や社員の言葉を紡ぎ直し、現場を歩いて空気を感じ、写真で記録し、言葉にならない文化を発見する。
そうして浮かび上がってくる「会社という物語」をどう構造化し、そこからどのような未来を描けるかを考える。

だからこそ、“つくってもらう”ではなく、“一緒につくる”という姿勢が大切です。
この違いが、結果を大きく左右します。ウェブを通じて会社を再編集することは、自分たちの価値を再発見することでもあります。


「文化」として根づかせる

ウェブを「集客のための装置」としてだけで見る限り、そこに企業の魂は宿りません。
圧倒的な情報量の中で生活する私たちを動かすのは、その会社にしかない信念や空気感です。
その企業の“体温”を感じること、信念を感じること、文化を感じること。そんな当たり前のことが大事だったりします。

そんな“体温を感じるウェブ”をつくるには、見せ方だけでなく、日々の関わり方が大切です。
ウェブでの企業活動で見落としがちなのが、“つくったあと”。
一度のリニューアルで完了ではありません。
会社が創業時から変化しながら今に至るように、ウェブサイトも日々の仕事や市場の変化の中で、少しずつ形を変えながら生きていく
企業文化の中にウェブが根づいた会社は、発信の温度が違います。

広報担当だけではなく、社員一人ひとりが「伝える」を自分ごととして捉える。
その意識が根づくと、ウェブは“施策”ではなく“文化”になります。
ウェブは本来、“つながり”のための道具。
会社の内と外、人と人をゆるやかに結びながら、見る人がその企業の温度を肌で感じ、気づいたら好きになっている──そんなウェブサイトこそ、これからの時代に残るものだと思います。


さいごに

ウェブは企業活動の縮図であり、その思想を映す鏡。
そう考えると、ウェブは“よく分からないもの”ではなく、あなたがよく知っている自分の会社のことなのです。
会社そのものの延長線上にある「もうひとつの現場」
そこに意識を向けるだけで、急に自分ごとになります。
だったらうちはこうだな。ああだな。と、次にやるべきことが見えてきませんか?

そうやってウェブの専門家である私たちと、その会社の専門家であるあなたとが、
一緒につくっていく。──そんなお手伝いを、私たちはしています。

category :   |  posted by : daisuke mori